料理が上手になるには、調味料を使いこなすのも必要なことです。
調味料にはそれぞれ特徴があり、使い方も異なります。たくさんの調味料の使い方を覚えられない時は、基本を押さえましょう。
調味料の基本は「さしすせそ」です。古くから伝わっている「さしすせそ」について詳しく見てみましょう。それぞれの調味料の効果や種類、「さしすせそ」以外の調味料の順番なども紹介します。
この記事の目次
調味料の基本、さしすせそってなに?
調味料の基本といわれる「さしすせそ」は、調味料を入れる順番を覚えやすいように語呂合わせした言葉です。
さ…砂糖
し…塩
す…酢
せ…醤油
そ…味噌
「そ」だけ頭文字ではないので覚えにくいですが、味噌の「そ」です。「せ」が醤油なのは昔は「しょうゆ」を「せうゆ」と書いたからですね。
煮物など和食を作る時には、このさしすせその順番通りに調味料を入れていくと、美味しく作ることができます。調味料を入れる順番が違うと、味が染み込みにくくなったり、食材の美味しさを活かせないこともあるので、忘れないようにしておきましょう。
順番に入れる理由は調味料の特徴にあった!
調味料を入れる順番は、さしすせそ。これは、ただの語呂合わせというわけではなく、調味料の特徴が関係しているためなのです。どういった特徴があるのか見ていきましょう。
1.砂糖
一番最初に入れる砂糖。砂糖の分子は他の調味料よりも大きいため、素材の中に浸透しにくく特徴があります。特に、塩や醤油より後に入れると、甘味が染み込みにくくなるので注意しましょう。甘味は一番最初、と覚えておきましょう。
2.塩
塩は砂糖よりも分子が小さく、浸透率が高くなっています。塩は素材の水分を排出させて、素材の組織を引き締めるので、砂糖よりも後に入れるようにしましょう。< /p>
3.酢・醤油・味噌
酢・醤油・味噌は、発酵させて作られた発酵調味料です。発酵調味料は、熱を加えると香りや風味が消えてしまう特徴があります。なので、後のほうに入れるのです。香りや風味を楽しむためには調理の最後に入れるか、味付け用と香り用で、数回に分けて入れるようにしましょう。
調味料の効果と種類を知っておこう
さしすせそを覚える時には、順番だけでなく、調味料の効果や種類も一緒に覚えておきたいですね。これを知っておくと、より順番が覚えやすくなったり、効果に合わせた料理を作ることができますよ。
砂糖の効果
1.甘味をつける
砂糖の効果といえば、料理の甘味付けです。自然な甘味をつけることで、塩気や酸味を調和させて、料理をまろやかにしてくれます。また、隠し味として使うと、コクや深さを出すこともできます。
2.素材を柔らかくする
砂糖は水分を含むため、染み込んだ時に素材を柔らかくする効果があります。柔らかく仕上げたい肉や野菜などの煮ものには、砂糖を先に入れて柔らかくしましょう。素材を柔らかくすることで、後から入れる調味料が染み込みやすくなる効果もあります。
3.腐敗や酸化を防ぐ
砂糖は水分を保つ性質があるため、カビや微生物の発生がしにくくなり、腐敗を防ぐ効果があります。また、高濃度の砂糖は、酸素を吸収しにくいことから、脂の酸化を防ぐ効果もあります。ジャムなどの保存食に砂糖が使われているのは、砂糖の効果を役立てているからなのですね。
砂糖の種類
上白糖
日本での使用率が最も多い砂糖です。甘味が強く、コクがあり、水に溶けやすい特徴があります。和食にも使いやすく、お菓子や飲み物などいろいろな使い方ができます。
グラニュー糖
砂糖の中でも、いちばん糖質の純度が高いのがグラニュー糖です。結晶がサラサラとしていて、真っ白な味なのが特徴になっています。お菓子や飲み物、風味を活かす料理などに使います。
三温糖
三温糖は、褐色でミネラルを多く含んでいます。甘味が濃厚でコクを感じるため、煮物や佃煮、味噌煮など濃い味付けの料理と相性がいいですよ。
ざらめ糖
結晶が大きく、99.9%の糖度がある高純度の砂糖です。白色の白ざらと茶褐色の中ざらがあります。白ざらはゼリーや果実酒などに使いやすく、中ざらは煮物などに使いやすいです。
黒砂糖
サトウキビの絞り汁を煮詰めたまま、精製せずに作られる砂糖です。濃厚でコクがあり、独特の風味があります。そのままお菓子のように食べられることもありますし、かりんとうなど風味を活かしたお菓子に使われることもありますね。こってりとした肉の煮物などにも使いやすいでしょう。
きび砂糖
きび砂糖は、精製途中の糖液を煮詰めて作られた砂糖です。さとうきびの風味とミネラルが残っていて、上白糖のように料理にも使いやすい砂糖です。煮物などの和食や、お菓子など幅広く使えます。
塩の効果
1.水分を抜いて旨味を凝縮する
塩は水分を排出させる働きがあるため、素材の旨味を凝縮する効果があります。旨味のある素材を使った料理には、塩を入れることでより旨味を強くできます。他の調味料の風味も引き立てるので、料理には欠かせない調味料です。
2.酸化を防いで保存性を高める
塩には、素材に含まれている酸化酵素の働きを止める効果があるため、素材が傷んでいくのを防いでくれます。また、水分を適度に排出するので、保存性を高めることができます。
3.素材の臭みをとる
魚などの臭みをとるには、塩をふりかける下処理をするのが効果的です。水分を排出する作用によって、水分と一緒に生臭さもとってくれます。
4.素材の甘味を引き立てる
塩は甘味のある素材に少量加えると、対比効果によって、甘味を強く感じさせる効果があります。スイカやメロンなどに塩をふりかけたり、おしるこなどに塩を入れると、甘味が引き立って美味しく感じるのはそのためです。他にも酸味や苦みを抑える効果もあるので、酢を使った料理に少量入れるとまろやかな味わいにしてくれます。
塩の種類
海水塩
海水を凝縮して作られた海水塩は、ミネラルが豊富で、まろやかな味が特徴の塩です。自然海塩には、天日干しして作る「天日塩」と、平釜で煮詰めて作る「平釜塩」の2種類があります。魚・野菜・米・鶏・豚との相性が良く、素材の味を引き立ててくれます。
岩塩
岩塩は、地殻変動などで、地層に閉じ込められた海水が結晶化して、自然に作られた塩です。日本では採れないため、ヨーロッパや北米などの大陸で採取されたものを輸入しています。鉄分が多く、塩味が強いので、肉や味の濃い料理との相性が良い塩です。
湖水塩
湖水は、地殻変動などによってできた塩分濃度の高い湖から採れる塩です。湖水塩を天日干しや釜炊きで採取する方法や、干上がった湖から結晶を採取する方法があります。ミネラルが豊富で、まろやかな味わいなので、煮込み料理やマリネ、味の濃い料理など幅広く使うことができます。
酢の効果
1.素材の旨味を引き立てる
酢の酸味は素材の旨味を引き立てる効果があります。まろやかな味になり、料理に深みを出してくれます。また、酢の成分であるアミノ酸がコクが出してくれるので、風味をアップする効果もあります。塩や醤油などを減らして薄味にできるので、減塩効果もありますよ。
2.アクやぬめりをとる
ごぼうなどアクの強い素材は、酢水にさらすことでアクをとる効果があります。魚のぬめりや臭み消しも酢で洗うのがおすすめです。魚の煮付けや肉の煮物など、臭みを取りたい料理に酢を使うと、臭みを消して美味しく仕上げてくれます。
3.腐りにくくする
酢には、殺菌・防腐作用があるため、料理に使うことで傷みにくくしてくれます。夏場や梅雨の時期など、料理の傷みが気になる季節には、酢を使うといいですね。
酢の種類
穀物酢
小麦・コーン・酒粕・米などをブレンドし、醸造して作られるのが醸造酢です。さっぱりとした味で、いろいろな料理に使えることから、最も広く使用されています。アク抜きや魚の下処理などにも活用できます。
米酢
米を主原料としていて、米の甘味や旨味などを感じられる酢です。まろやかな味わいで、酢飯に合う酢です。マリネやドレッシング、合わせ酢などにも使いやすいですよ。
黒酢
麦や米などを長時間発酵・熟成させて作られる酢です。琥珀や黒い色が特徴で、アミノ酸やミネラルが豊富に含まれています。独特の風味がありますが、そのままドリンクとして飲んだり、タレに使われることも多い酢です。酢豚などコクを出したい料理にもぴったりです。
醤油の効果
1.深い旨味を出す
大豆から作られる醤油には、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の五原味が全て含まれています。料理に加えることで、調和のとれた深い味に仕上げてくれます。特に旨味成分のグルタミン酸は、鰹節やしいたけなどの旨味成分と合わせることで、深い旨味を出ます。和食には欠かせない調味料ですね。
2.照りを出す
醤油は、熱を加えるとアミノ酸と糖分が反応を起こして、照りを出す効果があります。熱を加えることで、メラノイジンという物質ができ、醤油の香ばしさを引き出せます。照り焼きはこの反応を上手に活用した料理ですね。
3.殺菌・防腐作用
醤油には、アルコールや塩分が含まれているため、殺菌や防腐作用も高くなっています。魚や肉などを醤油漬けにすると、素材を長持ちさせることができます。また、臭みを消す効果もあるので、醤油を使うと魚や肉の臭みを消すこともできます。
醤油の種類
濃口醤油
大豆と小麦の割合がほぼ等量で使って作られていて、国内生産量の8割を占めている醤油です。塩分は約16%で、香りや味、色のバランスが良く、調理や卓上調味料として、幅広く使うことができます。
薄口醤油
色が淡いことから淡口醤油とも呼ばれている醤油です。国内生産量は1割強で、関西を中心に使用されることが多くなっています。淡口と書くこともあります。塩分量は18~19%で、色は薄いですが、濃口醤油よりも塩分は高くなっています。野菜の煮物や、うどんつゆなど、素材の風味や色を活かした料理に向いています。
たまり醤油
国内生産量は2%程度になり、中部地方を中心に使われることの多い醤油です。塩分量は濃口醤油と同じくらいですが、他の醤油と違い、ほとんど大豆で作られています。そのため、大豆の旨味成分が強く、独特な香りや、濃厚でとろみがあるのが特徴です。刺身などのつけ醤油や、佃煮など煮物にも使われます。
再仕込み醤油
醤油を2度醸造する製法から、再仕込み醤油と呼ばれている醤油です。発祥は山口県ですが、現在では全国的に作られていて、国内生産量は約1%になっています。濃厚な味わいで、刺身や寿司などにつける卓上用の醤油として使われることが多いですね。
白醤油
蒸した小麦を主原料にした淡白で甘味の強い醤油です。三河地方を中心に使われることが多く、糖分が12~16%と高いのが特徴になっています。吸い物や茶碗蒸し、うどんつゆに使うと、独特の風味を楽しめます。
味噌の効果
1.肉や魚の旨味を引き出す
味噌には、たんぱく質分解酵素が含まれているため、肉のたんぱく質を分解して、柔らかくする効果があります。柔らかくすることで、肉の旨味成分を引き出してくれます。また、魚の表面に塗ると、水分を守ってくれるので、旨味や食感を保つ効果もあります。
2.魚の臭みを消す
味噌には臭いを吸着する働きがあるため、魚を味噌漬けにすると、臭みを消す効果があります。鯖など臭みの強い魚は、味噌漬けや味噌煮にすると美味しく仕上がりますね。
3.料理にコクや深みを出す
味噌は発酵食品なので、料理に使うことでコクや深みを出せます。素材の味を活かしながら、まろやかな味わいになるので、美味しさを感じやすくなりますよ。味噌によってコクや甘味が違うので、使い分けてみましょう。
味噌の種類
米味噌
米味噌は、日本で8割の割合で使われている味噌です。大豆に米麹を加えて発酵・熟成して作られています。赤味噌、白味噌、淡色味噌など種類も豊富で、それぞれ色の濃さやコク、甘味が違うので、料理によって使い分けるのがおすすめです。
豆味噌
豆味噌は、八丁味噌とも呼ばれ、大豆に豆麹を使って作られる味噌です。東海地方を中心に生産されていて、味噌煮込みうどんや味噌カツなどの名古屋メシには欠かせません。
麦味噌
田舎味噌とも呼ばれる麦味噌は、大豆に麦麹を加えて作られている味噌です。もともとは、農家で食べられることが多かった味噌で、現在は、中国や四国、九州地方などでよく作られます。甘口と辛口があり、甘口の方が麹が多く、辛口の方が塩分が高くなっています。
さしすせそ以外の調味料はいつ入れる?
さしすせそ以外の調味料を入れる時にも、順番は大切です。
和食でよく使う酒は、アルコールを飛ばすためにも、一番最初に入れるようにしましょう。最初に入れることで、素材を柔らかくする効果もあります。
みりんの場合、本みりんはアルコールが含まれているので、酒と同じタイミングで入れましょう。みりんにも素材の臭みを消してくれる効果があります。みりん風調味料は甘味を足すだけなので、最後に入れて仕上げるようにしましょう。
みりんとみりん風味の違いはこちらでも紹介していますので見てみてくださいね。
調味料を使い分けて料理上手になろう!
調味料の順番を守るだけで、それぞれの効果や特徴を活かした味付けができることがわかりましたね。調味料にもいろいろな種類があるので、料理によって使い分けるのも料理上手の第一歩です。調味料の基本、さしすせそを参考にしながら、自分の味を見つけてくださいね。