赤酢というお酢をご存知でしょうか?赤酢は江戸前寿司に古くから使われてきた調味料です。現在でも赤酢を使っている寿司屋は多くあり、「江戸前寿司といえば赤酢」というこだわりを持つ人もいます。そんな赤酢の特徴や歴史・効能、さらに赤酢を使ったレシピについてまとめました。
この記事の目次
赤酢とは
お酢には米酢をはじめとして黒酢やりんご酢、ワインビネガーなどさまざまな種類がありますが、赤酢も古くから日本で使われてきたお酢のひとつです。一般人の認知度はそれほど高くないかもしれませんね。赤酢は江戸前寿司にはかかせない調味料として、お寿司屋さんの間ではポピュラーな存在です。
赤酢の作り方
通常のお酢は、白米や玄米・トウモロコシなどの原料に麹菌を加え、もろみをアルコール発酵・熟成させて作られます。しかし、赤酢の原料はなんと酒粕。そのため別名粕酢(かすず)とも呼ばれます。
酒粕は日本酒を作る際に絞って残る部分で、アミノ酸が豊富です。この酒粕をさらに長期間貯蔵・熟成させると、酒粕に含まれる糖分やアミノ酸がだんだんと茶褐色に変わっていき、奈良漬けのような香りがしてきます。こうして熟成させた酒粕を発酵させて作られた赤酢は、ほんのり赤みがかったような薄茶色です。シャリに混ぜるとご飯がほんのり赤く染まるところから、その名前がついたと言われています。
赤酢の歴史
赤酢を日本で一番最初に発明したのは、現在も調味料メーカーとしておなじみのミツカンでした。その歴史は江戸時代までさかのぼります。
肉や魚の保存食として長期発酵させる「なれずし」を原形に、1ヶ月程度の発酵で切り上げる「生なれ」が普及しはじめたのが室町時代。それをヒントに、魚をシャリと握る「早ずし」が、1800年頃の江戸で流行っていました。
ミツカンの初代である中野又左衛門は、もともとは造り酒屋でした。日本酒を作る際に出る酒粕を有効活用したいという思いから、酒粕から赤酢を作ることに成功します。そこで、シャリに使う米酢に着目。米酢よりも安く、なおかつうまみの強い赤酢を使えば、もっとおいしく手軽なすしが作れると考えたのです。そのもくろみ通り、赤酢はたちまち江戸じゅうの寿司屋の間に広まり大流行。そこから「江戸前すしといえば赤酢」が定着したのです。
赤酢の特徴
赤酢には、一般的なお酢と比べてさまざまな特徴があります。色・味・香りについてそれぞれ見ていきましょう。
■色の特徴
赤酢の特徴として、まずはその色が挙げられます。一般的に出回っている米酢や醸造酢と比べてみると、茶褐色〜赤みがかった金色をしています。そのため、使うと食材もほんのり薄茶色に。お寿司屋さんで、シャリの色が濃いお寿司を見たことがありませんか?そのお店では、赤酢を使っていたのかもしれません。
■味の特徴
赤酢は米酢や醸造酢と比べるとまろやかな酸味があります。さらに大きな違いはうまみが強いこと。長期熟成された酒粕は100種類以上のアミノ酸を含んでおり、その酒粕を原料としているためうまみ成分をたっぷり含んでいます。そのため、料理に使うと奥行きのある味が出るのです。
■香りの特徴
赤酢には、ダイアセチルと呼ばれるにおい成分が少ないことがわかっています。ダイアセチルは酵母や乳酸菌が発酵する際に生成され、ビールやワインといった酒類では好ましくないにおいとされています。
江戸前寿司とは
江戸前寿司はその名の通り、江戸時代に全国に伝わった文化です。現在の東京湾である江戸前の海で穫れた魚介類を、新鮮なまま提供することが可能だったために広く普及しました。
江戸前寿司ではシャリのほかにも、〆鯖などのシメものやガリなどお酢の出番が多く、重要な調味料だと言えます。現在では江戸前すしでも米酢を使う店が多いものの、赤酢にこだわって使う店も存在します。さらにはネタによってそれぞれのシャリを使い分けたり、シャリには米酢、シメものには赤酢を使うお店もあるなど、江戸前寿司と赤酢は切っても切り離せない関係なんですね。
■赤酢を使ったシャリの特徴
江戸前すしではもともと、お酢と塩のみでシャリを作るのが一般的でした。現在では砂糖を加えた甘めのシャリのほうが普及していますよね。赤酢と塩のみで作られたシャリはパラパラとほぐれやすく、また酸味が効いているので、脂がのってこってりとしたネタとよく合うと言われています。
赤酢のすごい効能をご紹介
■アミノ酸
アミノ酸は、私たちの皮膚や髪の毛、筋肉などのたんぱく質の元になり欠かせない栄養素のひとつです。アミノ酸の含有量は、100gあたりで穀物酢が50〜80mg、米酢で100mg。これに対し、赤酢の場合は200mg相当が含まれています。
◎脂肪燃焼・ダイエット効果
アミノ酸は筋肉を増やして基礎代謝を上げ、血流をよくしてむくみや老廃物を排出するサポートをしてくれるそうです。脂肪燃焼効果や、ダイエットや冷え性の改善にも効果も期待できるようです。
◎運動時のサポート
アミノ酸は運動時のエネルギー源としても使われ、持久力を高めて疲労回復もサポートしてくれるそうです。
◎血液サラサラ効果
アミノ酸に含まれるアルギニンとメチオニンという成分が、血小板が固まるのを防ぎ動脈硬化や生活習慣病の予防に効果が期待できるようです。また、ACEという酵素の働きを抑え、血圧の上昇を防ぐため高血圧予防にも役立つようです。
■クエン酸
通常は、お酢に含まれる酢酸が体内で活性化することでクエン酸に変化します。しかし、赤酢の場合ははじめからクエン酸が含まれているため、さらに効率よく摂取することが可能です。
◎疲労回復効果
私たちの活動に必要なエネルギーの元であるブドウ糖がきちんと使われず体内に残ると、身体が酸性に傾き疲労の原因となります。クエン酸は酸性物質をアルカリ性に変えてくれるため、疲労回復に効果が期待できます。
◎クエン酸サイクルで疲労をためない
さらに、「クエン酸サイクル」と呼ばれる働きがあることもわかっています。これは、クエン酸をとることで体内のサイクルが正常化し、疲れによって発生する乳酸を取り込んでエネルギーとして活用してくれる働きのこと。疲れやすい、身体がだるいといった症状を改善効果が期待できます。
◎抗酸化作用
酸化とは、身体の細胞が錆びはじめる状態のこと。細胞の酸化は老化をはやめ、さまざまな病気の原因になります。クエン酸には酸化のもととなる有害物質を取り去る強い抗酸化作用があり、高いアンチエイジング効果が期待できるようです。
おすすめの赤酢をご紹介
赤酢は主にお寿司屋さんで使われていますが、一般に流通している製品もいくつかあります。昔ながらの手法でお酢作りをしている醸造元では、オンラインショップから購入できるところも。おすすめの赤酢をピックアップしてご紹介します。
■ヨコ井(横井醸造) 純粕酢 與兵衛(よへえ)1.8L / 1,419円
赤酢で有名なヨコ井では、業務用の赤酢をオンラインショップで販売しています。2012年のミシュランガイド東京・横浜・湘南の中で、寿司部門の27軒中19軒の寿司屋でヨコ井の赤酢が使われているほど、本格的な味わいが特徴です。原料は酒粕のみで、長期熟成することで強いうまみを引き出しています。うまみが強いため砂糖と塩を控えめに使うことを推奨しています。
■ミツカン 純酒粕酢 三ッ判山吹 900ml / 1,080円
江戸時代から伝わる伝統製法で、じっくりと時間をかけて作り上げています。赤酢が作られた当初、その色合いから「山吹」と命名され、品質が高い証として「三ッ半」の名がつきました。うまみが強く、お寿司や酢の物に使うとまろやかに仕上がります。
■但馬醸造 但馬の赤酢 200ml / 815円
兵庫県養父市で、廃校となった旧西谷小学校を利用して平成20年から製品作りを始めた但馬醸造。長期間の醸造が必要な静置醗酵法という昔ながらの方法で、自社栽培米を使うなど地域に貢献しながらのお酢作りをしている会社です。
赤酢には国産の純米粕のみを使用。江戸時代の味を再現し、深い味わいとまろやかな酸味が特徴です。
■MIKURA 酒粕赤酢 潤朱(うるみ) 900ml / 1,296円
三重県にあるKIKURAは、昔ながらの伝統製法にこだわってお酢作りをしている会社です。木桶を使った静置醗酵は期間もコストもかかりますが、コクがありまろやかで栄養豊富なお酢ができます。熟成させた酒粕を使い、静置醗酵で仕上げたこだわりの酒粕赤酢です。
■飯尾醸造 富士赤すし酢 360ml / 1,296円
明治26年から京都でお酢を作り続けている飯尾醸造。お酢の原料となる無農薬の米づくりから手がけ、自社の蔵で酢もともろみ(酒)まで作る全国でも珍しい会社です。やわらかい酸味とやさしい塩味で、砂糖を控えたい人にぴったり。
赤酢を使ったシャリの作り方
それでは、ご家庭でも食べられる赤酢を使ったシャリの作り方をご紹介します。
【材料】
・米 2合
・昆布 5cm
★赤酢 大さじ2
★砂糖 大さじ1
★塩 小さじ2
1、米を研ぎ、昆布を入れて普段よりも固めに炊く。
2、★印を混ぜ合わせておく。
3、ご飯が炊けたら桶やボウルなどに移し、合わせたすし酢をかけながらしゃもじで切るように混ぜる。うちわであおぎながら行うとよい。
ご家庭でも食べやすいように砂糖入りのレシピにしてあります。本格的な味にするなら砂糖を抜き、塩を小さじ1に減らして作ってみてください。作ったシャリはちらし寿司や手巻き寿司に利用可能です。
赤酢を使ったレシピ
赤酢はシャリ以外にもコクのあるお酢としてさまざまな料理に使えます。おすすめのレシピをご紹介します。
■赤酢の浅漬
【材料】
・大根、きゅうり、かぶ、なすなどお好みの野菜
★白だし 大さじ3
★赤酢 大さじ1
1、お好みの野菜をカットしてビニール袋に入れ、★印と一緒に軽く揉むように混ぜる。
2、空気を抜いて1時間ほど置いたら完成。好みで柚子や生姜を入れると風味が増す。
■赤酢の人参ラペ
【材料】
・人参 1本
★オリーブオイル 大さじ1
★赤酢 大さじ1.5
★砂糖 少々
・塩 少々
・粗びき黒こしょう 少々
1、人参をスライサーで薄切りにしてから細く千切りにする。
2、★印を混ぜたものと混ぜ合わせる。
3、塩こしょうで味を整える。
■鯵ときゅうりの混ぜ寿司
【材料】
・赤酢のシャリ 2合
・鯵の干物 2尾
・きゅうり 1本
・みょうが 2個
1、鯵の干物を焼き、骨と皮を取り除く。
2、きゅうりとみょうがは半月切りにし、鯵とともにシャリと混ぜ合わせる。
■なすの揚げびたし
【材料】
・茄子 2本
★赤酢 大さじ4
★砂糖 大さじ2
★醤油 小さじ1
1、茄子を乱切りにし、油で素揚げする。
2、油をよく切り、茄子が熱いうちに★印と和える。
本格的な江戸前の味を試したいなら赤酢を使おう
熟成させた酒粕を原料に使い、茶色がかった色と独特の風味が特徴の赤酢。有名寿司店のみならず、家庭で利用する人も多く隠れた人気があります。赤酢を使ったシャリでお寿司を作れば、家庭にいながら江戸前の味を楽しめるかもしれませんよ。