日本が誇る、発酵調味料「味噌」。地域や材料により味は様々です。スーパーにもたくさんの種類が置いてあり、何を基準に買ったらいいのか迷った経験はありませんか?
さんざん悩んだ挙句、いつものを選んでしまう、なんてことになってしまいます。
そんな味噌ジプシーに送る「お味噌の種類と選び方」を徹底的に解説します!
この記事の目次
基本中の基本、味噌の種類とは?
お味噌には沢山の種類があります。白味噌、赤味噌、豆味噌、麦味噌・・・・・ぱっと思いうかぶものだけでも、これだけの種類がありますね。
これらの違いは何でしょうか?材料が違うのでしょうか?味噌は大豆からできていると習ったのに、麦みそは麦からできているのでしょうか?豆味噌はわざわざ豆と書いてあるということは、違う豆からできているのでしょうか。それとも、作り方が違うのでしょうか・・・・・・?
違うのは知っているけど、これらの違いを正確に知っている方は少ないのではないでしょうか。美味しい味噌を見つける前に、まずは味噌の分類方法と種類を確認してみましょう。
味噌の分類方法とは?
麹による分類方法
味噌は色や味だけでなく、材料で分類されています。材料と言っても、主な原料はみなさんご存知の「大豆」です。麦味噌や豆味噌と言われるものも大豆が主原料であることに変わりはありません。何が違うかと言いますと、使っている「麹」が違うのです。
「麹」は「こうじ」と読みます。塩こうじやしょうゆこうじなど、よく耳にするこの麹、一体何なのでしょう。
麹とは、味噌や醤油を作る際に使用する「麹菌」を繁殖させたものです。具体的には、穀物に麹菌を植えて、繁殖させたものです。写真を見てみてください。これはいわゆる普通の麹、「米麹」です。普通は米麹のことは単に麹と言います。お米に菌を繁殖させているので、お米が見えるがわかりますね。
この麹を大豆に混ぜ、菌のために大豆が発酵して、味噌になるのです。つまり、麹は製造過程で一番大事な役割を担っているのです。
米麹を使用したものが、一般的な味噌になりますが、他の穀物を使用した麹もあります。麦、大豆を使用した、麦麹、豆麹です。
もうお分かりかと思いますが、どの麹菌を使っているかにより味噌の種類が決められます。
大豆と米麹を使用している味噌は米味噌。大豆と麦麹では麦味噌、大豆と豆麹では豆味噌になります。
麦味噌と言っても麦が主原料なわけではないのです!
麹の違いにより風味も変わり、合う食材も変わってくるなんて不思議ですよね。
ちなみに複数の味噌を複数調合したものは、調合味噌と呼ばれます。
色による分類方法
味噌の色に違いがあるのはご存知かと思います。もう一つの分類方法は、色による分類です。白味噌、赤味噌というのは色による分類の名称なのです。
ところで、どうして味噌には色の違いが発生するのでしょうか?
味噌の色合いは、発酵熟成している際に起こる「メイラード反応」が関係しています。
メイラード反応は、大豆などのアミノ酸と糖分が反応して、茶色く変化することを言います。
色で分類すると、味噌は赤味噌、淡色味噌(主にミックス味噌と呼ばれるもの)、白味噌に分類することが出来ます。
ちなみに赤、淡色、白ともに麹は米を使った味噌が一番多く出回っています。
発酵を止めているかどうかの分類
「生みそ」と書かれている味噌もあります。「生」というのは、樽から出したそのままをパッケージングしているものになります。麹菌が生きている状態で食べることができます。味噌にこだわっている方は、生みそがおすすめです。
しかし一方で、パッケージに入った後も発酵が進みますので、食べごろを過ぎてしまったりすることもあります。そこで、清酒やアルコール、加熱処理などで発酵を止めたものが普通の味噌です。品質が均一になることが特徴です。
どちらも一長一短ですから、好みのものを選べばいいでしょう。
味による分類方法
味噌は味でも分類することが出来ます。甘口と辛口で分けるのが一般的です。
辛口、甘口とは、どれくらい塩辛いかということですが、単に塩の量で決まるものではありません。もちろん、食塩の量に比例して塩味が強くなりますが、麹の「歩合」によっても辛口に仕上げることが出来ます。
「歩合」というのは、大豆と麹の比率のことです。麹の割合が高い方がまろやかで甘みが強く、甘口の味噌に仕上がります。
赤味噌と白味噌の違い
味噌の分類が解ったところで、美味しい味噌を選ぶためにもう少し味噌の知識を深めていきましょう。
色が赤っぽい赤味噌、白っぽい白味噌ともに、様々な種類の味噌が出回っています。これらの多くは米麹を使ったもです。
赤味噌の中で、特に特徴的な味噌が存在します。 それは八丁味噌に代表される、愛知県などの中部地方が主な原産地の味噌です。赤褐色で、お値段も比較的高めです。固い質感と、コクのある濃い味が特徴です。
これらの中部地方の味噌は、米麹は使用されておらず、豆麹を使用しています。つまり「豆味噌」です。名古屋めしとして有名な、煮込みうどんや、土手鍋、味噌カツなどはこの味噌が味の決め手になっています。
豆味噌は、熟成期間や作り方にも違いがあります。
白味噌は熟成期間が短く、材料の大豆を煮て作ります。熟成中の大豆を混ぜる作業を’切り返し’と言いますが、白味噌はあまり切り返しをしません。
赤味噌は、大豆を蒸して作り、切り返しをマメに行って、長期間熟成します。ふつうの味噌に比べ、手間がかかるので、赤味噌が高価なのは納得がいきますね。
ちなみに、赤味噌で米麹を使用している物は、「米味噌・甘口・色は赤」は、東京や京都、徳島の一部などで生産されています。「米味噌・辛口・色は赤」は、北海道や関東甲信越を中心に作られています。
美味しいお味噌とは?
「美味しいお味噌を選ぶ」といっても、人それぞれ好みがあるので、一概にこれが美味しいですよ!と押しつけることは出来ません。
甘い、辛いといった好みから、使う料理によって適した味噌も違います。美味しいお味噌の好みは分かれるところですが、味噌の美味しさってどんなところでしょうか?
味噌は、甘みや塩味、うま味や酸味、苦みと言った様々な味が複雑に交わっています。
これらのバランスの善し悪しが、味噌の美味しさで一番大切なところ。
この中でも美味しさを感じる’うま味成分’、これが多いと美味しいと感じやすくなります。
味噌特有のうま味は「熟成」に大きく関係しています。
味噌は熟成するとき、大豆のタンパク質が分解されグルタミン酸(アミノ酸)を作ります。
このグルタミン酸は味の素でおなじみ、「うま味」の代表格です。
熟成が進めば進むほど、うま味は強くなっていくんです。
そしてそのグルタミン酸に塩味などの他の味が加わることにより、味の相乗効果を生んでいます。
味噌がじっくり熟成され、大豆のタンパク質の分解が進むと、人の舌に感じる刺激を緩和してコクの深い味噌に仕上がるのです。これをふまえると、熟成期間が長いほうがおいしく感じる傾向があるかもしれません。特に長期熟成の赤味噌はおいしく感じるでしょう。
味噌の原材料、確認していますか?
もう一つ、気を付けなければいけないのが原材料です。味噌を買うときに裏面の材料欄、確認していますか?
本来の米味噌の原材料は、「米・大豆・食塩」だけです。今でも市場の80%を占める米味噌の原材料は、「米・大豆・食塩」だけですが、一方で色々な食品添加物を加えて、味を調整しているものも多く出回っています。
出汁の入った味噌も売っていて、お味噌汁を作るときにお出汁は不要という商品も増えてきました。忙しい主婦には強い味方ですが、出汁入りは特に注意が必要です。
味噌の塩分濃度から好みの味噌をチョイス
味噌をはじめとする発酵食品の多くには、塩が多く使われています。健康に気を遣う人は、塩分を気にして、味噌は使用していないという人もいるくらいです。
でも、味噌は日本人の身体に適した調味料。一気にたくさん摂取しなければ、健康維持に一役も二役もかってくれる調味料なのです。
とはいえ、気になる塩分。塩分についても見てきましょう。
味噌の塩分濃度をザックリとわけると、色が薄いものの方が塩分を含む比率が少なくなります。
味噌の分類でわけると、米味噌の甘口の赤白が塩分濃度5〜7%と一番低く、次いで米味噌の甘口味噌淡色、麦味噌甘口、豆味噌と続きます。
一番塩分が高いとされる味噌は、米味噌の辛口味噌の淡色と赤、そして麦味噌の辛口味噌が塩分濃度12〜13%となっています。
味噌は熟成期間が長くなると、塩辛さが減少していきます。
塩分濃度は同じなのに、舌で感じるしょっぱさがないことを’塩なれ’と言い、塩なれを起こさせるために乳酸やペプタイド、アミノ酸を添加して和らげている場合もあります。ということは、味だけを見て塩分が多いかどうかは判断できないということです。ですので、これまでに紹介した分類を見ながら考えるとよいのです。
味噌に使われる添加物
味噌は調味料の中では添加物の使用がとても少ない食品ではありますが、ゼロではないものもあります。出汁入の味噌なら、調味料アミノ酸が入っているものが多いでしょう。
調味料アミノ酸を入れることで、本物の出汁を入れているのと同じくらいのうま味を出すことができます。
他にもビタミンB2が入った味噌も売られています。これは、お味噌の色を鮮やかにするためのもの。消費者は見た目が綺麗なものを選ぶ傾向がありますから、味噌のように熟成して色が濃くなってしまうものに使われるケースが多いのです。
色を安定させるため、次亜硫酸ナトリウムを使っている場合もあります
そして、一番味噌に使われている頻度の高い添加物と言えば、酒精やアルコール。
味噌は出荷後も発酵を続ける、言わば生きた調味料です。蔵から出して出荷すると同時に、色も味も変化していくのが普通です。しかし、スーパーに陳列したり販売するにあたって、色や味が個々によって違うのは困ってしまいますよね。
味噌は発酵しているので、流通過程で容器が膨張して破損してしまう恐れもあります。
そのために、酒精やアルコールで麹の活動を止めたり・弱めたりしているのです。
添加物を気にしだすと、過剰反応してしまいそうですが、酒精やアルコールは、販売するにはやむを得ない添加と考えて良いと思います。
また、近頃は使用が減ってきた味噌への保存(ソルビン)の添加。流通が良くなったため、使用は減ってきていますが日持ちさせるため使用されている事もあります。
ホッとする昔から慣れ親しんだ味噌を選ぶ
味噌の美味しさを、科学的に追求するなら、グルタミン酸(アミノ酸)と塩分や酸味などの調和が取れているものという定義ができるでしょう。
しかし、人間の味覚はそれだけでは判断がつきません。経験によっても大きく左右されます。外国の食べ物が口に合わなかった経験はありませんか。その国の人は「美味しい」というのに、日本人にとっては、「美味しくない」ということも多いでしょう。つまり、経験によって、味覚は変わるのです。昔から慣れ親しんだ味が美味しいと感じるということです。
自分にはどんな味噌が合っているのか?それを考えたとき、子供の頃から親しんでいる味噌や、育った地域で生産されている物を選ぶとしっくり来る人も多いようです。
自宅で何の味噌を使っていたかわからない時は、まずは米味噌を試しましょう。米味噌を使用している家庭は多く、スーパーで売っている味噌の8割が米味噌と言われています。生産も北海道から九州まで幅広く、万人の口に合うと考えて良いでしょう。
米味噌に的を絞れば、後は甘めが良いか、少し塩味が欲しいかで考えればOK!
九州四国地方の人であれば、主流は麦味噌になります。麦味噌には甘口と辛口があるので、そのどちらか好きな方をチョイス。どっちも好き!と言う方は、2種類購入して混ぜて使用するのもオススメです。
筆者は愛知県出身ですので、もちろん豆味噌の赤味噌を常備しています。でも、赤味噌だけでは飽きも来るし、合わない料理もあります。そんな時のために、米味噌の白を常備し、調合して使用したりしています。
味噌との出会を大切にする
好きな銘柄の味噌が見つかればそれが一番良いのですが、好きな銘柄に出会うまでは少々時間もお金もかかりそう。無難な味噌を購入して自分の好きな味に混ぜると言った方法も、美味しい味噌への近道です。
また、旅行に出掛けた際にその地域の味噌蔵や味噌屋さんに行くのも良いですね。
味噌蔵や味噌屋さんでは、味見も出来ますし、新しい味噌との出会いに新鮮さを感じることも出来ると思います。
旅館で食べたお味噌汁が美味しかった!そんな時は遠慮せず、旅館でどんな味噌を使っているか聞いてみましょう。
旅館では多くがその地方食材を使用していることが多く、味噌もご当地味噌を使用していることが多いんです。
自分で味噌を作っている旅館もあったりして、旅の思い出にもなります。
親切な旅館だと、使用している味噌の蔵や販売所を教えてくれたり、少しわけてくれることもあります。
ただ、味噌は合わせる食材によって味も変化します。
旅館で食べたのは美味しかったけど、家ではイマイチと言うこともあるでしょう。そんなことを避けるために、お出汁は何を使用しているかも併せて聞くと良いですね。
うま味は合わさることで、相乗効果を発揮します。
お出汁のうま味成分と、お味噌のうま味成分の相性が良いと言う事もありますので確認してみて下さい!
まとめ
お味噌の種類や、美味しさの秘密を紹介させて戴きましたがいかがでしたでしょうか?
味噌の選び方って、本当に難しいですよね!
「人には好みがある」というのは大前提で、美味しいと感じる味噌は人それぞれです。
まずは今使っている味噌に、どんな味が加われば自分にとってベストかを考えてみましょう。
もう少し甘みが欲しいなら、麹の比率が高いものを。
辛みが足らないと思うなら、色が濃いめの味噌を選んでみてはいかがでしょうか?
味噌は長期保存が可能な食材です。
何種類かを購入して、自分で調合してみるのも良いですね。
人の味覚は体調や季節によっても変化します。
自分で調合するなら、味覚の変化にも対応可能なのでぜひトライしてみて下さい!