とんかつやフライなどに活躍するソース。あまりに当たり前に食卓にあり、普段自分が何のソースを使っているか、意識することはありませんね。今回は日本で一番消費されている中濃ソースについて、ウスターソースやとんかつソースとの違いを交えてご紹介しましょう。
ソースには実はいくつかの分類があり、その中で、一番使われているソースは「中濃ソース」です。
読み方は「ちゅうのうそーす」。
中濃ソースの中でも最も使われているのがこの「ブルドックソース」。
あるある!と思った方は東日本の方かもしれません。東日本では一家に一本、当たり前のようにあるこのソース、じつは西日本ではあまりメジャーではありません。西日本では主に「ウスターソース」を使うので、中濃ソースは見たこともない、という人も多いのです。
簡単に違いを紹介すると、中濃ソースはとろりとており、スパイシーですが、甘みも強いのが特徴です。ウスターソースはスパイシーで、醤油のようにさらさらとしています。
違いについては後で詳しく説明しますので、まずは中濃ソースから見てゆきましょう。
この記事の目次
中濃ソースってなに?
中濃ソースは、とろみがあってスパイシーさと濃厚さの両方の要素を持ち合わせもった万能ソースです。
東日本では、とんかつ、フライ、目玉焼き、お好み焼き、たこ焼き、なんにでも中濃ソースを使う傾向があります。家庭にソースは中濃1本しかないという方も多いのではないでしょうか。
一番売れているブルドックソースの中濃ソースの原料を見てみましょう。
主な材料は野菜・果実。りんご、たまねぎ、レモン、トマト、プルーン、ニンジンなどを煮込んで裏ごしして、スパイスと、お酢をブレンドして作ります。スパイスにはとうがらし、しょうがのほか、白コショウ、オールスパイス、タイム、セイジ、フェンネル、ローレル、クローブ、シナモンなど10種類以上を使っています。
野菜・果実の旨味にスパイシーさをプラスし、ほどよいマイルドさに仕上げたソースで、フライにも料理にも使うことができる万能ソース。
ノンオイルで食品化合物無添加(着色料・化学調味料・増粘剤・甘味料)で、安心して食べることができます。
中濃ソースに対してなんとなくカロリーや油分が高いとか、化学的という印象がある方もいるかと思いますが、実はとてもヘルシーな調味料なのです。
中濃ソースの代用品
食卓の必需品、中濃ソースが万が一なくなってしまったときは、ウスターソースと濃厚ソースを合わせるのが最も簡単です。そもそも中濃はこの2つのソース中間なので、当たり前といえば当たり前です。ウスターソースしかない場合は砂糖等で甘みをプラスすれば近い味わいになります。
使い方
使い方としては、かけて食べる他にも、料理に使うこともできます。少しだけ紹介しましょう。
ひき肉料理に
ハンバーグやミートローフなどのひき肉をまとめて加熱するような料理には、中濃ソースが隠し味になります。スパイスがたくさん入っていますので、肉の臭みを消したり、しっかりとした味をつけることができるのです。豊かで複雑な甘みも料理の味をワンランクアップさせてくれるでしょう!
手づくりソースに
肉料理にかけるソースを作る際にも中濃ソースが活躍します。トマトケチャップ、赤ワイン、砂糖、お好みでみりんやコンソメをあわせて煮詰めれば、簡単ドミグラスソース風のソースを作ることができます。ハンバーグを作った後のフライパンで作ると、タネからにじみ出た油と肉汁と混然一体になってさらに濃厚なソースになります。簡単で美味しいので、ハンバーグの時は私は必ず作ります。
中濃の”中”は何の中?
中濃の「中」には意味があります。簡単に言うと「とろみ」が中くらいなので、中というのです。とろみが最も少ないのが「ウスターソース」で、最もとろみが強いものが「濃厚ソース」という風に、いろいろなソースは、3つの分類に分けられています。味や用途ではなく、とろみ、つまり「粘度」で分けられるのです。
正式には以下のように定義されています。
ウスターソース・・・ウスターソース類のうち、粘度が0.2Pa・s未満のものをいう。
中濃ソース・・・ウスターソース類のうち、粘度が0.2Pa・s以上2.0Pa・s未満のものをいう。
濃厚ソース・・・ウスターソース類のうち、粘度が2.0Pa・s以上のものをいう。
参照元 JAS規格 http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000102.html
とんかつソース、お好みソース、たこ焼きソースなどとろみが強いものは濃厚ソースに分類されています。焼きそばソースはウスターソースに分類されているものが多いですね。
最初のソースはウスターソース
さて、意外と奥が深いソースの世界。すこし趣向を変えて、歴史を見てみましょう。
数あるソースの中で最初に生まれたのはウスターソースです。ウスターソースは1837年、日本でいう江戸時代が始まったころ、イギリスのウスターシャー州ウスター市で生まれました。薬剤師のリーさんとペリンズさんが作ったことから「リーペリン」と名付けられ、発売されるやいなやまたたく間にヨーロッパで広まったということ。今でもウスターソースの元祖としてイギリスでは90%以上のシェアを誇っています。
リーペリンウスターソースの製法は秘伝とされていますが、アンチョビと香辛料を使って作ったソースを熟成させる、ということだけがわかっています。原材料は、醸造酢、糖類(砂糖、糖蜜)、野菜、果実(タマリンド、玉ねぎ、にんにく)、アンチョビー、食塩、香辛料、香料と表示されているのですが、決め手の香辛料が何なのかまではわかりません。
この元祖ウスターソースは明治時代に明治屋が輸入する形で日本にやってきます。やがて当時の醤油メーカーがソース製造にチャレンジし、国産のウスターソースが生まれてゆきます。土地の風習的嗜好、製造所の地域特色が生まれてゆき、関東は甘みが多く、関西は酸味が強く、そのほかの土地に辛味が強いと分かれていたようです。
ソースがやってくるまで、日本の調味料といえば味噌や醤油しかありませんでした。ソースは最初はなかなか受け入れられなかったのですが、食文化の西洋化とともに徐々に市民権を得ていきます。
次にとんかつソース
ウスターソースの次に生まれたのがとんかつソースです。とんかつのルーツはヨーロッパの肉料理「カットレット」にあります。それが洋食として日本に入ってきたとき「カツレツ」と呼ばれるようになりました。カツレツはとんかつとは違って、うすい牛肉に細かいパン粉をまぶして多めの油で焼いた”炒め焼き”メニューです。
こちらがとんかつ
こちらがカツレツ
それが徐々に豚肉が使われ始め、明治の30年代には”揚げる”とんかつが登場。最初はウスターソースをかけて食べられていました。
それからさらに約半世紀の時を経て、とんかつ用のソースが誕生します。
ブルドックソースさんでは昭和26年に、「とんかつソース」を発売しました。
そのころ西日本では、粘度の高いどろどろしたソースをお好み焼きやたこ焼きにかけるようになってきていたようです。そ昭和27年ごろには広島のオタフクソースがお好みソースを発売しています。ちなみに、それ以前のお好み焼きにはお醤油やウスターソースをベースに調合したソースを使っていたようです。
そして中濃ソースが生まれる
昭和40年代に関東で中濃ソースが生まれています。ブルドックソースは昭和41年に中濃ソースを発売しています。
このころ、東京の洋食屋さんではウスターソースととんかつソースを混ぜた中間のソースをオリジナルで作っていて、それに目を付けたメーカーが、その様子を見て商品化したようです。 甘さもスパイシーさも、とろみもちょうど「中間な」ソースとして中濃ソースが誕生、関東を中心に広まったのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?中濃ソースを使ったことがない方でも、興味を持っていただけたのではないでしょうか。ぜひスーパーで探してみてくださいね。きっと”見えてない”だけで置いてありますよ!